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  • 2017年10月20日

    日本音響エンジニアリングさんの音響試聴室にお邪魔してきました

    一般的に、屋内の音を屋外に漏らさないように家は設計されます。
    しかしピアノ演奏やシアタールームなど、大音量を屋内で発生させる場合には特別な対処が必要になります。
    またそのような場合、「良い音」で聴きたいという要望が大抵セットになります。
    建築設計事務所は防音や遮音に関する基本的なノウハウを持っていますが、外に漏れる音を厳密にマネージメントしたり、「良い音」となると建築音響専門家の領域になります。

    現在進行中のプロジェクトでオーディオ兼シアタールームを設ける計画があります。
    そこで今回は建築音響のパイオニア、「日本音響エンジニアリング」さんにお邪魔しました。








    日本音響エンジニアリングとは?

    「日本音響エンジニアリング」さんは旧「日東紡音響エンジニアリング」で、ご存知の方は「日東紡」という
    名前で記憶されている方が多いと思います。
    建築と関わる部分に関して言えば、コンピューターシミュレーションや音響測定で
    ・数値的に音漏れをマネージメント
    ・「良い音」を生み出す環境構築
    を専門にされている会社さんです。

    NHKの放送スタジオをはじめ、レコーディングスタジオ、ホール、無響室などの施設から、一般住宅のピアノ、
    オーディオルームなどの設計、施工まで行っています。
    単純に音を外に漏らさないという技術はもちろん、「良い音」が求められる環境の設計まで行う建築音響の
    スペシャリストです。

    特にAGS(Acoustic Grove System)と呼ばれるルームチューニングツールは「日本音響エンジニアリング」さん
    独自のツールで、部屋の音響改善に効果的とのことです。
    (※AGSの写真は日本音響エンジニアリングHPより)









    「音」をマネージメントするとは?

    建築において「音」にまつわることと言えば、「防音(=遮音)」を思い浮かべる方が多いと思います。
    冒頭でも書きましたが、室内でピアノを弾く、シアタールームで大音量を出すような場合に「遮音」、
    つまり部屋の外、家の外に音を漏らさないようにする特別な対処が必要になります。





    では遮音にさえ対処しておけば事足りるのかというと、それだけでは大抵の場合不十分です。
    例えば反響音(反射音)の多いお風呂場。
    鼻歌を歌うのにお風呂場は適した場所ですが、ピアノの演奏に適しているでしょうか?
    また逆に反射音が極端に少ない場所、例えばスキー場などはピアノの演奏に適しているでしょうか?

    皆さんも何となく想像出来ると思いますが、お風呂場もスキー場もピアノの演奏には適してはいません。
    反射音は多すぎても少なすぎてもダメで、適切な量の音の反射が「良い音」を生む空間の条件になります。



    反射する音の量をコントロールするには、壁や天井に音を吸収(吸音)させます。
    例えばピアノから10の音が出て、壁が3の音を吸音すれば反射音は7になります。




    では反射の量さえ適切にコントロールしておけば事足りるのかというと、それだけでも不十分なんです。
    例えば「ヤッホー!」です。
    20世紀、しばしば山頂で行われていたアレです。
    山頂で「ヤッホー!」と叫ぶと、近くの山々に反射した「ヤッホー!」が数秒後に返ってきます。
    私達は自分で発した「ヤッホー!(直接音)」を聞いてから数秒後、返ってきた「ヤッホー!(反射音)」を
    聞きます。では、部屋の中で「ヤッホー!」と叫んだらどうでしょうか?
    「ヤッ」と叫んだとほぼ同時に、部屋の壁に反射した「ヤッ」を聞くことになります。

    さて、音は空気中を波のように進みます。
    波の特性として、波同士がぶつかって干渉すると元の波より大きくなったり、小さくなったりします。
    叫んだ「ヤッ」と、壁に反射して返ってきた「ヤッ」がぶつかると、「ヤッ」となったり、「ヤッ」となったり
    するわけです。
    例えばピアノの音の「ラの音階」が小さく聴こえたり、大きく聴こえたりします。
    それってピアノを演奏する環境としてどうでしょうか?
    「ラ」の音を適切な強さで弾いているのに、聴こえてくる「ラ」は微妙に強い音になってしまったとしたら。
    演奏者の意図とは違う音を視聴者に聴かせることになってしまうんです。

    つまり、ピアノから出る直接音と、壁に反射して返ってきた反射音の干渉をコントロールする必要があるんです。
    「日本音響エンジニアリング」さんは「反射音を拡散させる」ことで音の干渉を軽減する技術を持っています。








    遮音

    最も近いお隣さんが500メートル離れているなら遮音を施す必要はありません。
    しかし5メートルしか離れていないのであれば遮音を施す必要があるでしょう。
    50センチしか離れていないのであればかなり厳重な遮音が必要になります。

    まずはどの程度の遮音性能が必要なのか、様々な視点からのヒアリングを受けました。
    必要な遮音性能を明確にしていただいたうえで、工法、壁の厚みなどについてディスカッションをしました。







    吸音

    「吸音」とは音のエネルギーを熱エネルギー等に変換したり、壁を透過させることで音を反射させないことです。
    内装に使用する材料を最適なものにする事で様々な周波数の音を吸音させることにより不要な音を残らないようにさせます。

    例えば、部屋の中に音を吸収しやすい物を置くだけでも吸音効果は得られます。カーテンや、家具類・人がいるだけでも吸音は得られます。

    実際には、壁や天井材に音を吸収しやすい板材を張ったり穴の空いた仕上材料の中に吸音力のある素材(ロックウール等)を入れ込むなどして吸音の程度を調整します。






    拡散

    音楽室や音楽ホールの壁や天井は複雑な形状になっていることが多いです。
    これは壁や天井に当たって反射した音が直接耳に入らないように音を分散
    させるためです。

    対して、日本音響エンジニアリングさんは「AGS」という複数の木柱を
    配列した商品で効果的に音を拡散させることを実現しました。
    これは、木々が立ち並ぶ森の中がとても気持ちの良い理想的な音響拡散空間で
    あることに発想を得て開発された商品だそうです。

    大きな改装、リフォームをすることなく、「AGS」を既存の部屋に設置する
    だけでも音響改善することが可能なツールです。
    日本音響エンジニアリングさんには「AGS」を設置した試聴室があり、その効果を確認させていただきました。
    まずはカーテンで「AGS」を隠し、カーテンによる吸音のみを効かせた状態で音楽を聴きました。
    吸音のみの状態は音に柔らかさと奥行き感がなく、抑揚の乏しい音に感じました。

    ところが、柱状拡散体を2セット置いただけで音に艶と豊かさが格段に増しより自然な音へと近づきました。
    エンジニアさん曰く、柱状拡散体を配置することで音を多方向に砕け散らせるような形で拡散反射させられる
    のが特徴とのことです。








    最後に

    今回の訪問で改めて建築音響の難しさ、奥深さを感じました。
    それと同時に、日本音響エンジニアリングさんが生み出す音響空間の素晴らしさも体験することが出来ました。

    当日、丁寧かつ長時間に渡ってご対応頂いた日本音響エンジニアリングの平田様・根木様、この場をお借りして
    お礼申し上げます。

    ■サウンド・ラボラトリー
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    ■TEL:03-3634-3525 (音空間事業本部)
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